一年半ぶりに会った高校時代からの友人は、ひたすらに美術監督・小林七郎氏のアニメを追っている。あまりにウテナ好きが高じて、ウテナを作り上げた人たちの軌跡をすべて辿ろうとしている。これも生活保護という無限の余暇でこそ成しえる執着だ。
インターネットには、「ありがたいけれど、なぜこの人はこんな活動を?」と疑問が浮かぶ人物が散見される。特にYoutube。例えば、僕も大好きなセラフィムコールなる古い美少女アニメの特定の一話だけを違法アップロードしているアカウントがある。なかなか配信などではたどり着かないレア回を世界に向けて発信している。こうした謎のアカウントを掘ると、異様な高画質でサブスクにも絶対に乗らないようなマイナーアニメをアップしまくるアカウントに出会う。
僕はレトロなCM好きで、CMまとめ動画を漁るのが趣味ですが、最近は10時間に及ぶCM集の動画を作成してアップするアカウントが出現した。今までだいたい1時間くらいだったのに。つけっぱなしで寝て起きても、まだ昭和のCMが連続している。おかげで本当にいま自分が起きているのかと錯覚するようで入眠時に気に入っている。
こうしたマニアは、世のビデオテープを集め、録画からCM部分を切り出して繋げ、Youtub上へアップロードすることが生き甲斐だ。たまにSNSなどで人々から録画したビデオテープを集め回っている様子を見る。草の根をかけ分けるかのように、ひたすら「当時の痕跡」からCMを採集し続ける。いったいなぜ? でも、そういう人が現実に存在し、また僕みたいな数奇者の好奇心を満たしてくれる。ありがたいですね。
果たして、こういう人物たちは何を思ってこうしているのか。
僕の友人は完全にこれになった。
なんと彼は、誰とも会わずに居た一年で、借りてきたDVDから映像を切り出し、件の小林七郎氏が担当したアニメの好きな背景シーンを動画でアップロードし続けていた!

すごい大胆な色の使いよう! 『忘却の旋律』。ウテナのニュアンス漂う。
本人曰く「好きな時に見返したいように」らしい。幾原監督が担当した自作以外での演出(『青い花』など)もまとめたり。おかげで、比較しながら背景美術を堪能したい人にとっては夢のようなアカウントとなっており、彼が作成したプレイリストには、さらにマニアックなアップロード者の動画がまとめられている。
なるほど。あまりにニッチな人間の正体の一つは、ただ自分が参照しやすいように映像を保存している無職だった訳だ。語る、共有するというよりも、本当に自分用としての。
友人がこういった存在になっていくことを誇りに思う。
このまま永久に働かず、会うたびに、それ誰が知っているんだよという演出や背景作画の話をしていてくれ。
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