↑NEEDY アニメ歌詞のお話をするよ。前回。
共依存モルヒネ……すごい曲名になりましたね。
禰󠄀智禍もまた、少しだけ本編で描けなかったバックボーンを話してみましょう。

本編の通り、母親に出ていかれた父子家庭かつ弟3人の家で育つことになった禰󠄀智禍は、まあまあ大変でした。父親も無愛想なタイプの男で、本質的に悪人ではないけれども、決して子育てが上手ではありません。しかし、男一人で酒癖が悪くギャンブルもするわりには「家が成り立つ」ギリギリくらいには努力する背中もしており、禰󠄀智禍も大きく文句を言えることもできず、なんだか歯がゆい気持ちのまま思春期を迎えます。

僕の周囲も、こうした「家庭の格差」が表出してくるのが中学からでした。自分含め、「母子家庭または父子家庭なことにより親が遅くまで帰ってこない」子供たちは、その持て余した若さもあって家でじっとすることができません。今思えば寂寥感も多分に含まれていたことでしょう。だいたい夜の街に繰り出します。僕らの場合は、朝まで立ち読みとか、ジャンクショップの試遊台で対戦ゲームとか(ネオジオの餓狼がおいてあってひたすら触ってたり)。

禰󠄀智禍の場合は繁華街を散歩しているうちに、だんだんと自身の役割を学び、同じく非行少女たちのメンタルケア役となって立場を得ます。彼女たちは時折、禰󠄀智禍に構ってもらうために食事や金品を渡すようになりました。自ずと禰󠄀智禍はコンカフェの男装キャストとして頭角を表し(未成年だったが)、SNSでもそれなりに有名になったあたりで美血華を拾ってつるむようになり……といった描写がアニメでは尺の問題で省きました。
禰󠄀智禍の苦悩は、悩める少女たちへ一時的に夢を見させてあげる代わりに、金銭を受け取る行為が善か悪かの葛藤です。そのあたりをクレバーに割り切っているあめちゃんと話が合うのもそのためで、美しいものは貢がれて当然と感じる美血華と、頑張っているからファンが応援してくれているとポジティブな現代っ子のロリポップには無い心労を抱えています。
結局、「そうやって悩んでくれる」事まで含めて信頼されているキャラクターであることが、ほんのりわかる7話は良い回(この回にかぎっては素直な人情話でしかない)なのではないでしょうか。
といった点も踏まえて作詞をしております。

このアニメ自体が「深夜に女児アニメが放送していたら」を裏テーマに考えていたので、キャラソンもまた「女児アニメの男装キャラっぽさ」を、原口さん・フェルフェンさんの両名と目指します。彼らが出した答えは「セリフパート多めでちょっと気が抜けた感じ」でした。最高ですね。ちょっと弱みが覗けるから余計に依存してしまう。ストレートにカッコつけすぎるよりも最もカッコいい塩梅へ挑戦したなあと驚きです。
夜で融かして飲んだ
鎮痛剤が効いて
ウソの果て
偽善者のdance
“悲しいね どんなに会いたいと願っても
キミから呼ばれないと入れないんだ”
夜の街自体が巨大な鎮痛剤でしかなく、お金を払って痛みを和らげるだけの装置です。
その装置を回す部品の一つにすぎない、けれどもその小狡さ含めて自嘲的なギャグにするしかない禰󠄀智禍の立場を詩にできたかなと。金銭を介するしかないので、「最終的には相手の判断で会うか会えないか決まる」部分をヴァンパイアと掛けています。
実際、搾取する側だって、それなりに愛着あって「会いたい」と願ってしまうこともあるでしょう。
が、世界のルールとしてそれは「営業」になる。

時計の針
忘れずにいて
「愛してない?」
そんなことは無い
静脈 パラノイア
モルヒネ wanna wanna 罠
「これで終わり」
聞かないでいて
「愛してない?」
答え言わない
動脈 血の苦味
見つめないで
愛してない?
騙してない
イヤ
イヤ
朝まで
会話劇のような作詞に初めて挑んでみたのですが、どうでしょう?
星希さんは奇しくも夢見りあむとして、自分たちの『INETERNET YAMERO』を可愛らしくカバーした印象が強く、そこからガラッと声の低さが変わって歌いあげるので、声優としての地力が伝わります。今後も、低めのキャラを演じる役者として羽ばたく様が目に浮かぶようでした。


キラキラした演出に見惚れて、MVは壇上大空さんにお願いしました。おかげですっごくキラキラしています。壇上さんとは初の依頼でしたが、「三田のキモオタと仲よかった頃から知っていた」と言われてビックリ。古参だ……。
「善」なんて胡散臭いテーマを背負った以上、縁の下の力持ちな活躍だらけな役回りになる禰󠄀智禍です。けれども、カラマーゾフどころか、このアニメ自体が彼女のような存在が居ないと、「この構造が正しいのか」疑いつつ割り切る役がいないと、「配信」「推される」といった本来センシティブな行為が嘘だらけになります(そのへん曖昧にしているアイドルアニメもどうなんだとたまに思いますが)。
彼女の功罪自体が、僕にとって非常に興味深く今後も探索していくテーマでもありますね。なぜなら宗教のあり方と密接ですから。
禰󠄀智禍さまでした。
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