宇宙の速度をはじめて描いたのは誰か。
幼き日の押井守は『2001年宇宙の旅』にて宇宙ステーションがゆったりと優雅に回転するシーンを見て、「キューブリックが宇宙の速度を決めた」と驚いた。以降の作品たちは、宇宙での乗り物や物体はすべてゆったり浮かぶように進むことが常識となった。キューブリックの影響はあまりに計り知れない。

恥ずかしながら今回の再上映ではじめて『インターステラー』を観ました。
それはもうたいへんな衝撃。メメントやオッペンハイマー、テネットにダークナイト……ノーランの映画はそれなりに観てきたけれども、本作は特にスケールが大きい! この作品を遅ればせながら映画館で鑑賞できたことに感謝。
インターステラーは一目でわかるほどに『2001年宇宙の旅』をリスペクトしている。それこそ、2010年代のSF映画の代表でありながら、やはり宇宙での乗り物はゆったりと動くように。
インターステラーで僕が最も感動したのは「空間のビジュアル化」でした。ネタバレなので気にする人は回れ右へ。
本作では「五次元空間」へ突入する。五次元……時間すら移動できる、人智を超えた世界。その場所がどうなっているのか、当時の人々が宇宙の速度を見たことがなかったように、もちろん誰も五次元の情景を知らない。
僕が愛してやまない昭和特撮ウルトラマンAに登場する人気超獣バキシムは、空を割って登場することで、テレビに齧りつく子供たちに「異次元」を見せた。
DVDをレンタルした世代ながらも、例に漏れずにゃるら少年も、この演出に度肝を抜かれ、「たしかにこれは異次元からの侵略者だ!」と納得したものです。
インターステラーの映画体験は、五次元をどう描写するかに掛かっている。ブラックホールのその先、誰も見たことのない宇宙描写でなければ、約3時間も椅子に縛られる僕らは納得できない。
ノーランの作品は極めて論理的で、すべて作中で説明されている。情報や時系列の整理が複雑なものの、謎は存在しない。演出や感情で誤魔化さない理系の映画。そんな彼がたどり着いた景色。
宙に浮かぶ大量の本棚。ノーランは時すら超越する五次元を「図書館」と解釈した!
素晴らしい。2時間超の疲労も忘れ、このシーン以降はつねに画面に釘付け。これまでの作品で様々な「時間」の描写へ挑戦し続けた監督が生んだ答え。これは美しい。
作品内のあらゆる伏線と設定の整合性を突き詰め、合理的に異次元をどう解釈し、そして映画的な見栄えも含めビジュアル化させるかを考え抜いたからこその立体図書館。詩情だけでは到達できない真の芸術。
キューブリックは『2001年宇宙の旅』ラストで、「人類以上の知能を持つ宇宙人の部屋」を、真っ白な高級ホテルで表現した。
この色遣い、配置、ラグジュアリー、すべてが素晴らしい空間であるものの、あまりに鋭すぎる解釈に対し、誰も意味がわからなかった。いわば「感性でのSF解釈」の果てか。こんなん本物の宇宙人もビックリだよ。
一方、インターステラーの出した答えは、論理と映画的演出でのSF解釈の極地。まごう事なき名作。最高の映画を観た。そのうえ、彼はこんな大作を打ち上げたあとも、一切撮影ペースを緩めない。映画に取り憑かれた天才。
そう遠くない未来、さらに技術と演出に磨きをかけたクリストファー・ノーランの映画を鑑賞できる事実が、ただただ喜ばしい。
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