プリチャンが見せた「特別でない子がバーチャル世界でアイドルになること」への百点満点の解答

プリチャンが見せた「特別でない子がバーチャル世界でアイドルになること」への百点満点の解答

書いた人 : nyalra nyalra

※本記事は2019年9月29日にnoteに投稿された記事の再投稿です。


 男と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る「美少女アバター化」。 VR世界で理想の自分を演じることができるVRChat文化の発展により、僕の知り合いたちもどんどんバーチャル世界で中身が男性の美少女たちとイチャイチャ過ごす毎日を送っております。

 もはやVRC内でおっさん同士が付き合ったり、恋愛で揉めたりも珍しくありません。絵面だけだと百合アニメであるのが非常に厄介。



 さて、現実のバーチャル界の地獄についてはどうでもいいとして、プリチャンの話をしましょう。


 2年目に突入してからのプリチャンは、メインキャラに「バーチャルプリチャンアイドル」である、だいあちゃんが登場。正確には「バーチャルプリ☆チャンアイドル」表記。「だもん」が口癖で、見ての通り七色の虹がモチーフになったサイケなデザインは、現実ではありえないバーチャルな存在であることが視覚的に伝わります。



 だいあちゃんの名乗り口上は「そこにいるのにここにいない」。目の前に映っているのに、この場所には居ないというバーチャルの概念を端的に表したセリフ。


 初登場は一年目最終回の51話。コレ(下記)の回ですね。大きなお友達の9割は、えもとあんなの感情に夢中でバーチャルプリチャンアイドルの登場に気づかない。


 公園のモニタから挨拶するだいあ。バーチャル世界でしか存在しない、コンピューターで作られたアイドルに、主人公であるみらいちゃんは「よくわからないけど凄い!」と企業の無能なお偉いさんのような感想を述べる。



 だいあちゃんが登場する前に、意味深に画面手前を通り過ぎる目隠れの少女……。こんな見事な目隠れは「わくわく7」以来です。本当に嬉しい。一体何者なんでしょう。



 この内気な美少女の名前は「虹ノ咲だいあ」。みらいちゃんたちのクラスメイトですが、引っ込み思案のため全然目立たない地味な子です。しかし、彼女は誰よりもアイドルが大好きで、みらいちゃんたちのライブも欠かさず部屋でチェック。この大きな瞳に綺羅びやかなライブステージが映し出されることで、彼女の瞳が虹色に輝く演出が満点。


 因みに、この「桃山みらいが反射しているだいあちゃんの瞳孔」はアクキーになっております。



 ライブ鑑賞程度ならかわいいものの、だいあちゃんはモニタ8枚並べてみらいちゃんたちをチェック。もはや監視状態に。この静かな狂い方こそプリチャンのキャラクターである何よりの証左。



 電気を点けずにモニタの明かりのみで鑑賞していたりなど、そのジメッとしたオタクっぷりは、いい歳した視聴者たちの共感と庇護欲を刺激。ここまで読んで賢明な読者のみなさんには、バーチャルプリチャンアイドルのだいあと虹ノ咲だいあが同一人物なんだなと推察していることでしょう。僕らもそう思っておりました。


 が、70話「夏のだいあフェス! ヒットパレードで熱いんだもん!」のラストでその予想は一気にひっくり返されまして、



 なんと、だいあがだいあに話しかけたのです。今までバーチャルのだいあの姿として皆と交流していたと思われただいあちゃんは、本当にモニタの外から観察していただけの少女でしかないことが発覚。

 「だいあもデビューする?」とだいあに尋ねるだいあ。慌てるだいあに、「そっか……。」と諦念とも本心を察しているとも取れる絶妙な返しが素晴らしい。


しばらくバーチャルの方のだいあの正体がわからないまま、話が進みます。


 そして76話「キラにちは!だいあとだいあが出会った日、だもん!」が放送。この回で全ての謎が紐解かれる。



 だいあのベースとなったのは、友達の居なかった虹ノ咲さんが読んでいた絵本のお姫様。お姫様は裁縫が得意で、自分のデザインした洋服を各国のお姫様に着せてお友達の輪を広げていきました。


 影響された虹ノ咲さんは、おばあちゃんから裁縫を習います。


 おばあちゃんから「みんなと遊ぶと新しい大好きが見つかるかも知れないよ?」と教えられるも、まだ小さい虹ノ咲さんはお友達を増やし新しい大好きを見つける意味を見出せませんでした。



 時は経ち、暗い部屋でモニタを眺める引きこもりオタクライフをエンジョイし始めるだいあちゃん。



 プリチャンライブと出会い、モニタも増えてきたころ、だいあちゃんは絵本お姫様と同じくお洋服のデザインに凝るように。



 そして、不可抗力ながら自身のデザインをコンテストに応募してしまうことに。ここでモニタが3枚に増え、陰キャ生活ながら、アイドルを通してだいあの大好きが増えてきていることが分かります。最終的にオタク顔負けのモニタ8枚になるのですが。


 そしてコンクールの商品として届いたデザインパレット到着。デザインパレットに自身が思い描いたコーデを並べ、「みらいちゃんみたいにキラキラしたい気持ちわかってくれるかな?」と願いを込めナビキャラの名前も「だいあ」で登録。



 そして誕生したもうひとりのだいあ。幼き日に読んだ絵本のお姫様そっくりですが、そのあたりの著作権に関してはガン無視で進む。正体は、デザインパレットにプログラムされたナビキャラのAIだったのです。


 「あなたもだいあ わたしもだいあ」


 「だいあはプリチャンがしたいんだもん? キラッツみたいにプリチャンでたくさんのお友達を作りたいんだもん? 大丈夫、だいあならできるもん!」


 彼女は、だいあちゃんの本心をなんでも知っている。


 そして時は経ち、ふたりは協力者としてフェスを開催し、プリチャン世界を盛り上げていきました。しかし、そうしてみらいちゃんたちに虹ノ咲さん自体も近づくにつれ、自分も輝きたくて涙を流すほどにアイドルへの憧憬が募る。




 時は満ち、だいあはだいあをアイドルデビューさせることを宣言。だいあの秘めた思いを受け止めた彼女は、もう「そっか……。」と曖昧に受け流しません。


 そして、本日放送された77話「ナゾのアイドル ついにデビュー!だもん!」へ繋がり、突然新しいプリチャンアイドルのライブ配信予定が入ったことで、プリチャン世界の女の子たちは大騒ぎ。



 特別番組やライブまで行い、新人を暖かく見守ろうとする先輩たち。そんな中、だいあちゃんは未だ勇気がでずに部屋で蹲ってしまいます。


 ネガティブな言葉を並べるだいあ。秘密を抱えたまま自分がデビューすることを「都合がよすぎる……」とまで言い切る切ないまでの自己肯定感の低さを、唯一の理解者であるだいあが「でも、それでもだいあはデビューしたいんだもん?」と背中を押す。


 そして、新人デビューのために憧れのみらいちゃんたちのライブが始まると、遂にだいあも決壊し「プリチャンアイドルに……みらいちゃんみたいになりたい!」と本心を叫ぶ。



 「じゃあ一歩。ううん……半歩だけ踏み出そう」。ここのだいあちゃんの理解が素晴らしい。全部一気に解決するのは難しい、そして初めは上手くいかないだろう。でも、彼女の勇気を後押ししたい。そこで、だいあが取った方法はバーチャル世界に存在する自分のアバターを貸すこと。


 「ゆっくり、一緒にしあわせになれるやり方を見つけよう。だいあとだいあで進むんだもん!」、この状態のだいあを最も勇気づける言葉はこれしかない。だいあを導けるのはだいあだけ。なんと美しい物語なんでしょうか。


 「プリチャンアイドルを導くのがだいあの役目! さあ、虹ノ咲だいあはプリチャンアイドルになるんだもん!」


 そう、だいあちゃんの考えたプリチャンアイドルを導く役目は、そのまま本人すらも導く存在になったのです。



 満を持してだいあのライブが開始!


 僕も画面の外から全力で応援。



 響き渡る虹ノ咲さんの方の歌声と踊り。幼い日に読んだ絵本を意識した歌詞。あまりの美しさに見惚れる観客。そして、一人だけ何かに勘づくみらいちゃん。この曲名「フレンドパスワード」というのですが、何百回見ても「ブレンパワード」に読み間違える。



 「歌えたね、だいあ」


 そして……



  「だいあがステージに立って、だいあが歌う」


  「そこにいるのにここにいない」


 そこにいるだいあとここにいるだいあ。バーチャルとリアルが一体化したからこそ生まれた二人だけのライブ。ここでキメ台詞の真の意味が回収されるとは思わず、涙……。


 もう薄暗い部屋で一人モニタを眺めるだけのだいあではなく、華やかなステージで歌って踊るだいあが居る。二人で見つけた本当の大好き。


 概念として、正しくバーチャルYoutuber要素を拾ってきているんですよね。バーチャルのアバターを通し、うつむきがちなリアルのオタクが一気に新しい世界へ羽ばたく。一昨年にVRへ感じた未来を最高の演出で表現。シャロン・アップルとも初音ミクとも違う新たな文化、バーチャルプリチャンアイドル。


 紆余曲折あり、それが良いか悪いかは別として、ここ一年で大きく軸が揺らいだVRの未来を、極めてエモーショナルな形……クラスの端っこにいる地味なオタクがバーチャル世界でトップアイドルになるという、ネットが第二の現実といっても差し支えなくなった現代だからこその夢を、プリチャンが余すことなく見せてくれました。


 いつかは、バーチャルYoutuberの大流行を受けて、それを元にしたアニメキャラクターも出てくるとは予想していましたが、まさかプリチャンが、女児アニメが、それも丁寧に丁寧に積み上げて最高の脚本でお出ししてくるとは……。



 気づいたときには、だいあちゃんグッズだらけになっちゃったんだもん。


 キラッとプリ☆チャン77話「ナゾのアイドル ついにデビュー!だもん!」…………100点!!!!!!!!


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コメント (3)

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Anonymous 3時間前
PEAK!!!!!!!!
herba 5時間前
thank you for providing an official translation for this older note post ! nyalra ! gosh , i was crying the further you revealed her story . . . i was already touched by it for i am an introvert who also has horrible self-esteem . . . the story behind her design for her virtual self reminds me of how a certain relatable video game character did it . . . both being tied to their childhood . . . this section also reminded me of how "suzu" from the animated movie "belle" (2021) how the design of her character reflected her other beautiful self ( where she mostly sees her flaws in real life , but the software showed her a reflection of her inner beauty ) ! her virtual self also helped her acclaim huge popularity . . . millions adored her . . . but unlike ame-chan or daia . . . suzu has a rebellious friend who introduced her to the virtual world ( called "u" ) . gosh . . . thank you for translating and writing this nyalra !
cocodo 12時間前
THX nyalra! to translate! I wanted to read it English by yourself! I really wanted. REALLY!! the IMPORTANT things is your sentence! thank you!