※数年前に書いた同人誌の内容を転載しています。
AV監督には、当初は一般映画の監督を目指したものの途中で挫折した結果、アダルト業界へ流れ着いた者も多いらしい。現在の有名監督の中でも、元はピンクな作品出身であるケースだって珍しくないでしょう。あの『平成ガメラ』だって、日活ロマンポルノ育ちな監督の判断により、下ネタだらけの作品になっていた可能性も大いにあったように。
そんな燻る野心を抱えたAV監督たちは、隙あらばAV作品に独創性を出そうとしてしまう。これが一般作であれば、それが吉と出るか凶と出るかは実力と運次第であり、その挑戦心は評価されるものかもしれない。しかし、AVはあくまで「自慰」のための媒体であり、ユーザーの性欲を満たしてやることが第一でなければならない。凝った演出やストーリーは誰も求めていないのですね。AV作品でアングルをじゃんじゃん切り替えてサブカルチックな演出なんか入れてしまうと、いろんな箇所が萎えたユーザーたちはブチギレ必至。自分たちがオナニーする筈が、監督にオナニーされてしまう結果となるわけだ。

つまり、こんな前置きを書いてなにが言いたかったか説明すると、ずばり『未来にキスを-Kiss the Future-』は、「監督の独創性が詰まった抜けないAV」そのものなんです。それが「良い」んだ。監督のオナニーを見せつけられてしまったが、オナニーの動作があまりに美しくて目を奪われてしまうような、そんな貴重な体験ができる。
イラストを担当したのはご存知「みさくらなんこつ」先生。みさくら先生を起用した上でキャッチコピーは「お兄ちゃん、ボクのこと、奴隷にして?」です。この情報で期待するのは調教モノ、または妹モノの抜きゲーでしょう。
シナリオは「元長柾木」先生。美少女ゲーム好きなら確実に知っている、哲学的なシナリオを得意とするライターさん。僕も大好き!
イラストもライターも大人気の一級品。しかし、世の中には相性という要素がありまして、これを間違えると合体事故が起こる。つまり、本作では「みさくら先生のイラストによる抜きゲーの世界観」を期待させながら、蓋を開けると「哲学的でメタメタなシナリオ」に繋がっていく構成なのです。

そりゃ僕らにとっては大好物ですよ。プログラムされた二次元世界のヒロインの感情と「ヒト」であるプレイヤーの関係とか、自己と他者の関係とか、そういう小難しい話を衒学的にどんどん展開し、読み進めるたびに気持ちよくしていって欲しい!
しかし、「奴隷モノ」として購入した当時のエロオタクたちはどうだ。「抜きゲー」としては半端なシチュエーションが展開され、おまけに彼女たちは「キャラクターとはなにか」について語り始める。まさにAV監督にオナニーされるわけです。
先述した通り、僕らはそういった作品が大好きですから、このテキストを読んだ時点で、本作を「シナリオを楽しむ」動機で楽しめるわけです。当時のレビューがどんなに賛否両論であろうとも。
この構成自体は、日常パートでよくある抜きゲーを演じる必然性がある。そして、抜きゲーだと認識しているほど、終盤でのギャップが活きてくるのですね。このギミックを含めて、元長柾木先生の挑戦心を褒め称えたい。特に、最初はありがちな恋愛ソングに聴こえる主題歌が、トゥルーへ向かうと「全て」が書かれた歌詞へ変貌する仕掛けには痺れましたね。
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