スペイン人のおばあちゃん、マリカルメンさんが亡くなりました。
マリカルメンさんは70年間スペインのレティーロ地区のアパートで暮らしていた女性でしたが、不動産会社が家賃を500ユーロ(約8万5000円)から2650ユーロ(約45万円)に引き上げたことから強制退去させられ、その後に心労から入院していた状態でした。
この事件を機に、同じく家賃高騰に苦しんでいたスペイン人たちの怒り爆発。あちこちでデモが始まり、「屋根のある場所」の大切さを伝えるため、政府の建物の周りでテントを広げて泊まりこむ抗議活動がスペイン全土に広がります。
なぜ僕が、この問題を日記に書くかと言うと、10日間スペインに滞在していた間の出来事であり、その様子を目の当たりにしていたからです。

夜のビルバオでの広場をテントたちが占拠し、隣ではちょっとした食糧配給が行われていました。
立派な建物の前にカラフルなテントが立ち並び、無言の抗議を行う。おそらく、ここビルバオのみでなく各都市で似たような光景が広がっていることでしょう。
日本ではなかなか起きない連帯感を眺め、マリカルメンさんのことを考えます。70年住み続けたアパートと街に暮らしていたいだけの87歳のおばあちゃん。抗議を行なっている方の一人が叫びます。「これはあなたのお母さんかもしれない。あなたのおばあちゃんかもしれない」。明日、強制退去されるのはあなたの身内、もしくはあなた自身の可能性だってある。

デモ活動が行われている広場から一歩踏み出すと、いつも通りの日常が繰り返されています。
自分がスペインをまわっている間もマリカルメンおばあちゃんの話題はひっきりなしに報道され、市民達は互いにデモへの参加を誘い合います。

近くの大聖堂前のテラスでは、労働を終えたスペイン人たちがビールやワインで日常を労る。彼らも、ひょっとしたら物価や家賃の高騰に怯えながらもアルコールで現実を忘れているのかもしれませんね。

テントの近くでは、おそらくデモと関係なく、以前からこの広場で寝床にしているのであろうホームレスの姿も。屋根の重要性を説く彼らは、石畳の上に転がる路上生活者も迎え入れるのでしょうか。テントと彼の間を観光客達が通り過ぎていく。
社会と現実を見たなあと帰国後、しばらくしてマリカルメンさんの訃報が日本でも小さくニュースとなりました。
マリカルメンさんの死後、デモ活動は拡大し、数千人による追悼行進がおこなれました。
あの時、ビルバオで見たテント泊の人々も、70年住んだアパートで最後を迎えたかったおばあちゃんを想って歩き続けているのでしょうか。
コメント (0)
コメントを残す
まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してください!