※本記事は約7年前に投稿された記事の再投稿です。
・好き好き大好き!

「好き好き大好き!」は、13cmが98年に発売した美少女ゲームです。これまたキャッチーなタイトル。タイトルにも元ネタはあるのですが、その話は少し先で。暗い鬱ゲー・鬼畜ゲーの中でも輪をかけて暗いゲームです。
あらすじ↓
内向的な主人公・長瀬 渡は、ヒロイン・天城 蒲乃菜が電車内でからまれているところを救って以来、彼女に想いを寄せ、執着している。
ある日、渡はついに蒲乃菜を拉致し、実家が所有する廃工場の地下室に監禁してしまう。おびえる蒲乃菜に「何もしない。ただ、傍にいて欲しい」と語り、その心を得ようとひたすら優しく接する。その一方、渡は秘密を守り通すために周囲の女性達と良好な関係を保とうとし、かえって抜き差しならない事態へ陥ってゆく。

あらすじの通り、基本的には監禁したゴムスーツのヒロインの様子を見に行くのと自室を往復するだけの作品です。画面は基本的に上記のスクショのCGが表示されます。BGMも大変重たく、美少女ゲームの中でもトップクラスに画面と内容が暗い。
キャッチコピーは「ボクハゴムガスキダ」。なので、ヒロインをゴムスーツ漬けにしているんです。自分が好きな物は他人も受け入れるだろうと考えてしまう精神性など、主人公の異常な思考とその変遷が醍醐味。

ずっと、この調子で進みます。途中で他ヒロインも登場しますが、そのうちの一人がキワモノでして、

見た目がなんとも個性的です。今なら逆に、受け入れられるファッションかも知れませんが、その独特なデザインは当時の美少女ゲームオタクたちを恐怖に陥れました。もちろん、この子も見て目通りに危険な子です。
・戸川純とR・D・レイン

タイトルとジャケットの色合いから見て、元ネタの一つに戸川純の「好き好き大好き」という名曲があります。これまた元祖ヤンデレと言われる程の迫力ある曲でして、
Kiss me 殴るよに唇に血が滲む程 Hold me あばらが音を立てて折れる程 好き好き大好き 好き好き大好き 好き好き大好き 愛してるって言わなきゃ殺す
かわいらしく歌い上げる前半と美声で仰々しい歌詞を響かせるサビのギャップが美しい。歌詞にもある通り、昭和史に残る衝撃。この歪んだ愛情と暴力のグラデーションは、ゲーム「好き好き大好き!」でも、ふんだんに活かされております。むしろラブかバイオレンス以外ない。
そして、このアルバムには「さよならをおしえて」も収録。昭和のヒットチャートのみならず、後の電波ゲーにも多大な影響を与えた名アルバム。
ちなみに、そんな戸川純の歌詞を解説して纏めた「疾風怒濤ときどき晴れ」の新装版が今月末に発売します。これまた、とても素晴らしい一冊ですので、興味がありましたらこの機会に是非。
そして、もう一つの「好き好き大好き」が、
こちら精神科医R.D.レインによる詩集、「好き? 好き? 大好き?」です。タイトルが正にそうですね。
イギリスの精神科医レインは1970年に出版した詩集『結ぼれ』によって、まったく新しいジャンルを創造したのである。それは詩とも、劇とも、対話とも読むことのできる新しい「シナリオダイアローグ」ともいえよう。
「serial experiments lain」とも関連の深い一冊。ライトに紹介すると精神科医による電波な詩集。「好き好き大好き!」では、たびたび主人公の内面世界が描写されるのですが、その内面描写は「好き? 好き? 大好き?」が意識されていることがノベライズ版を読むとわかります。
・ノベライズ版「好き好き大好き!」の完成度
さて、「好き好き大好き!」がどのような作品かの話をしてきたわけですが、自分が特に好きなのは、実は原作でなくノベライズ版。現在はプレ値でなかなか手が出しづらいですが、全エロゲの中でもトップクラスに気に入っております。

それもそのはず、なぜならノベライズ版の著者は「矢森惨太郎」。後に「さよならを教えて」のシナリオを務める作家です。ここで鬱ゲー同士、繋がってくるんですね。「さよならを教えて」については下記の記事にて。

ゲーム版では、監禁されたヒロイン側の視点での文章や、

当然、途中で選択肢も挟まるのですが、ノベライズ版はつねに主人公視点で話が進むので、彼の狂気と思考の渦に浸るには本の方が適していると感じます。

矢森惨太郎氏が描く、主人公の鬱々した精神性。読んでいるだけで、どんどん文字に引き込まれていく。

そして何より、たびたび引用される「好き? 好き? 大好き?」の詩。これにより、作品の意味合いが引き締まる。好き好き大好き!が、戸川純とR.D.レインあってこその集大成であることがノベライズ版に色濃くでているんです。
オチや展開も原作とは少し違い、ヒロインとの関係性や精神医学要素強めな部分もノベライズ版ならではとなっております。

中盤での精神科医と主人公の対話のシーンは手に汗握る緊張感。監禁という非日常によって、どんどんドライブしていく主人公の内面と、変化していくヒロインの諦念と価値観は、他の作品では決して味わえません。
推したいのはノベライズ版よりは、ゲーム版(Android)の方が比較的簡単に手に入りますし、とうぜん原作あってこそですので、まずはゲーム版をどうぞ。
ページを見ると、ジャンルが大変なことになっていますね。
今後も好きな美少女ゲームの話を思いっきりしていければいいですね。
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